ウェブアクセシビリティと言われて、昔を思い出してみた話

色って「見えている」ことが前提なわけですが・・・

この記事は、Web Accessibility Advent Calendar 2014の10日目の記事です。

僕はいつも色のことを話したり書いたりする機会が多いのですが、そもそも色というのは「見えている」ということが前提になっているものです。その「見えている」人の中でもいろんな色覚特性の人がいて、そういう人たちでも、きちんと見ることができるよねという基準として、コントラスト比が定められていたりします。

それを実現するためにはうんぬんという話を書こうと思っていたのですが、ちょうど昨日チャットワークの守谷さんが「色とデザイナーとアクセシビリティ」という素晴らしい記事を書かれていらっしゃったので、そちらを読んでいただくことにして、私は妄想に舵を切らせてもらいます。

実装系の話ではなく、漠然と考えていることをそのまま書いただけなので、オチは付かなさそうだということを最初に断っておきます。

ちょっと昔話をしてみます

僕が通っていた小学校・中学校には難聴学級がありました。もちろん聴覚に障害のある生徒を支援するクラスがあったので、何名か通っていました。今はどうかわかりませんが、当時は市内では唯一の小学校だったと思います。

1学年に2クラスしかない小さな学校だったので、6年間ずっと難聴の生徒と同じクラスでした。音楽の授業も同じように受けていたのですが、その中には音楽のレコード(当時)を聴く授業もあったのですが、彼らも同じように授業を受けていたんです。

聞こえないのにレコードの音なんて・・・と最初は思ったのですが、音楽の先生は風船を用意して、その風船をスピーカーに当てて、彼らに風船に頭を付けさせて振動を伝えていました。小学生ながらこういう方法があるんだとものすごく感心したのを覚えてます(先生の名前は忘れてしまいましたが)。

また、ある時は友達の一人から翌日に持っていくものの質問の電話を受けたこともあります。今にして思うと、彼はものすごい覚悟で電話してきたはずです。何とか電話で何度も繰り返される質問を理解して、その回答を大きな声で電話口で話しました。彼はわかったと言って電話を切ったのですが、翌日上手く伝わっていたことがわかって、よかったなぁと思いました。

今だと骨伝導のイヤホンだったり、メールだったりという新しい技術でいろいろと解決できてしまったりするわけなんでしょうが、その時にできる工夫だけでも、実はいろんなことができたんだなぁと思い出します。

実は長い間この話を忘れていたのですが、思い出したのは自分でウェブを使って仕事をしはじえて、色のことを考えるようになってからのことでした。

未だに答えられない質問をされたこと

これは10数年前のことですが、ある人に「色相環のこの色とこの色の区別が付かないんですけど、どうすればいいでしょうか?」と質問されました。いわゆる色弱の人だったのですが、僕はそれに答えることができませんでした。その原因や解決方法を調べていくとウェブアクセシビリティという言葉に出会いました。

未だにその問いに対する答えは出ていないのですが、少なくとも工夫することによって、読みやすくしたり、使いやすくすることができるということを知ることができました。

もしかすると色弱の方の治療法なんかも将来は出てくるのかもしれません。あるいはまったく目が見えない人にも直接脳に刺激を与えて色がわかるようになったり、耳の聞こえない人に音を伝えられたりするなすごい技術がでてくるでしょう。

でもそれは今すぐではありませんし、それまでは、ウェブ制作者ができるだけのあれこれをやっていかなければならないのだなぁと思って、今に至っています。

ウェブアクセシビリティが他人事じゃなくなってくるよ

と言うのが私の極めて個人的な思い出話です。自分の身の回りにいた人の話をしましたが、年齢も40歳を超えて、視力が衰えたりとかも出てきますし、今まさに腱鞘炎気味でして、マウス操作が辛いなぁと感じたりもしています。

そうなってくるとウェブアクセシビリティというのが他人事でなく、自分がその対象になるんだなぁというのをここ数年あらためて痛感しています。特に視力の衰え(と言うよりもピントの調整)に難が出てきた気がするので、10ピクセルの文字とかを見たら、メールボム(死語)でも送ってやろうかという気になります。

みんなでちょっとずつできることを

あらゆるウェブが急にアクセシブルになるかというと、そうではありません。きちんとマークアップする人だけがウェブサイトを作るわけではありませんしね。

先に挙げた守谷さんの記事で、

職域・職能関係なく皆が基本作業として丁寧にWebを作ること=アクセシビリティを確保すること

とまとめられていました。本当に同感です。

平成18年の統計(多分最新)によると、視覚障害者の数は31万人だそうです。言い換えればそれ以外の人の多くは、視覚を使ってウェブサイトを利用しているということになります。

色をあーだこーだという立場としては、多くの人が利用している視覚の部分の重要性を強くアピールしていくことができれば、より多くの人によりよい環境を提供できるようになるはずですので、2015年も引き続きがんばって伝えていきたいと思っています。

また一人の制作者という立場では、いろいろ反省しながらも、よりアクセシブルな実装を目指して、マークアップにも精進しなければという感じです。

とりとめもなく書いてきましたが、要するに僕はウェブが好きだし、いいことも悪いことも運んでくるSNSも好きです。将来、体を壊したり、怪我とかしてしまったとしても、きっとウェブなしでは生きていられないでしょう。

そんな時が来たとしても、みんなが今からちょっとずつがんばっていけば、楽しく過ごしやすい世の中(ウェブ)になってるんだろうなと思っているわけで、ウェブアクセシビリティが少しずつでも広まっていけばいいなと心から願うわけです。